後遺障害事故における逸失利益とは
どのように計算すればよいか
計算方法をご説明します。

逸失利益の計算

後遺障害により労働能力が低下したと認められれば、逸失利益として請求することができます。
計算式は下記の通りです。

労働能力の低下により収入が減少してしまった分の損害

計算式

  • 事故前の年収×
  • 労働能力喪失率×
  • 労働可能年数に対応する
    ライプニッツ係

例えば
年収500万円の30歳のサラリーマンが、交通事故の被害に遭われ
後遺障害が残り後遺障害8級に認定された場合。
後遺障害8級の労働能力喪失率は45%
30歳に対応するライプニッツ係数は16.7113
500万円×0.45×16.7113 = 約3760万
弁護士に依頼した場合には、弁護士会基準の後遺障害慰謝料として 830万円も別途請求することが可能になります。

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損害額算出の基礎となる年収の出し方

原則的には事故の前年1年間の年収を収入額とします。もっとも、ケースによっては事故前年の年収と厚生労働省から発表されている年齢別平均給与額(賃金センサスと呼ばれています)を比べた上で、より高い方を収入額とする場合もあります。主婦や学生などの場合は、上記の賃金センサスを基に年収を計算します。年収をどのように算定するかによって逸失利益の額は大きく変わることになります。

労働能力喪失率

交通事故により後遺障害が残ってしまった場合、残存した後遺障害によってどの程度労働能力が失われるか(交通事故の前と比べてどの程度仕事ができなくなったか)という指標を労働能力喪失率といいます。労働能力喪失率は後遺障害の等級により決定されることになっており、一番重い後遺障害である1級では喪失率は100%、一番軽い後遺障害等級である14級では5%と決められています。

労働能力喪失期間・ライプニッツ係数

労働能力喪失期間とは、後遺障害が残ったため労働能力の喪失や低下が継続する期間のことをいい、通常は就労可能年数の67歳までの期間とされています。そこで、労働能力喪失期間は原則として67歳から症状が固定した時点の年齢を引いて算出します。症状固定時の年齢が37歳だとすると労働能力喪失期間が30年となりますので、事故前の年収に労働能力喪失率を掛けて、30年を掛けると逸失利益が算定できそうですが、逸失利益の算定の為にはやや複雑な計算が必要になります。 算定された損害額から中間利息を控除する必要があるため、ライプニッツ係数を掛けて算定することになります。このライプニッツ係数とは中間利息を控除するための係数で、裁判上でも使用されている係数です。

以下に「後遺障害等級別の労働能力喪失率及びライプニッツ係数」
を掲載しますので参照してください。

矢印

後遺障害等級別自賠責保険金額

労働能力喪失期間 ライプニッツ係数 労働能力喪失期間 ライプニッツ係数 労働能力喪失期間 ライプニッツ係数
1年 0.9524 24年 13.7986 47年 17.981
2年 1.8594 25年 14.0939 48年 18.0772
3年 2.7232 26年 14.3752 49年 18.1687
4年 3.546 27年 14.643 50年 18.2559
5年 4.3295 28年 14.8981 51年 18.339
6年 5.0757 29年 15.1411 52年 18.4181
7年 5.7864 30年 15.3725 53年 18.4934
8年 6.4632 31年 15.5928 54年 18.5651
9年 7.1078 32年 15.8027 55年 18.6335
10年 7.7217 33年 16.0025 56年 18.6985
11年 8.3064 34年 16.1929 57年 18.7605
12年 8.8633 35年 16.3742 58年 18.8195
13年 9.3936 36年 16.5469 59年 18.8758
14年 9.8986 37年 16.7113 60年 18.9293
15年 10.3797 38年 16.8679 61年 18.9803
16年 10.8378 39年 17.017 62年 19.0288
17年 11.2741 40年 17.1591 63年 19.0751
18年 11.6896 41年 17.2944 64年 19.1191
19年 12.0853 42年 17.4232 65年 19.1611
20年 12.4622 43年 17.5459 66年 19.201
21年 12.8212 44年 17.6628 67年 19.2391
22年 13.163 45年 17.7741
23年 13.4886 46年 17.8801

後遺障害等級別自賠責保険金額

等級 第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級 第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
保険金額 3,000 2,590 2,219 1,889 1,574 1,296 1,051 819 616 461 331 224 139 75
労働能力
喪失率
100/100 100/100 100/100 92/100 79/100 67/100 56/100 45/100 35/100 27/100 20/100 14/100 9/100 5/100

単位:万円

介護を要する後遺障害等級別自賠責保険金額

等級 第1級 第2級
保険金額 4,000 3,000
労働能力
喪失率
100/100 100/100

単位:万円

むち打ち症の場合の労働能力喪失年数

むち打ち症として後遺障害が認定された場合には他の後遺障害と比べて短い期間の労働能力喪失期間が認定されるのが裁判実務と言えます。裁判所がなぜこのような認定をするのかですが、裁判所はむち打ちの原因がはっきりしないことに加えて、むち打ちの症状は時間の経過とともに症状が緩和される(又は症状に慣れてしまう)と考えているようです。
具体的には12級で10年程度、14級で5年程度に制限する裁判例が多く見られますが、それより長い労働能力喪失期間を認定した裁判例もありますので、具体的な症状に応じて適宜判断するべきです。

顔面醜状痕の場合の逸失利益

交通事故により負傷をし、顔面に傷痕が残った場合、逸失利益を請求できるのかという問題があります。以前は、男性の場合と女性の場合では同じような傷痕でも認定される等級が異なっていましたが、現在では男女で認定される等級に差異はなくなりました。しかしながら、逸失利益を請求する場面においては男女差があり、やはり女性の方が逸失利益が認められやすくなっています。
それでは逸失利益が認められるのは具体的にはどのようなケースかといいますと、特に容姿が仕事の重要なポイントを占めるような職業をしている人達(女優、モデルなど)の顔に人目につく傷痕が残った場合であれば逸失利益は間違いなく認められます。この場合は仕事をする上で大きな影響があり、場合によっては仕事ができなくなってしまう事さえ考えられるからです。これに対して、事務系の仕事をしている人の場合には逸失利益が認められにくくなっています。もっとも、被害者の年齢や具体的な仕事の内容によって逸失利益は総合的に判断されますので、職業だけで安易に判断すべきではありませんし、事務系の仕事の人でも逸失利益が認められたケースもあります。